大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)2486号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と争点〕被告はコーヒー喫茶店を経営し、原告はその従業員として雇われていたものであるが昭和三七年五月三日午後十二ころ原告が勤務を終つて帰宅しようとして右店舗の三階にある更衣室を出て同所から二階に通ずる階段を降りて、同階段の下から二、三段目のところにさしかかつた時、被告方従業員訴外中野実が同階段の最上段から足を踏みはずして下方に転落してきたため、原告は頭、背、腰等を右階段に打つけ、同階段下にずり落ちた結果、原告は頸推部捻挫等の重傷をうけたので、治療費並に慰藉料として金三八八、一八五円の支払を求める。右階段は建築基準法に違反し、極めて幅がせまく、急勾配で昇降に危険な状態にあつたもので、右階段の設置にはかしがあつたものというべきで右階段の占有者であり所有者である被告は右事故によつて原告がこおむつた損害を賠償する義務がある、と主張した。

判決は後記のとおり認定した上本件階段の設置にかしがあるとする原告の主張を容れ、その請求を一部認容した。判決の階段の設置にかしありとして説明するところはつぎのとおりである。

〔判決理由〕原告本人尋問および検証の結果によれば、被告店舗は三階建であつて、本件階段の幅は四九センチメートルであり、けあげは一八、五センチメートルのところが一ケ所、二一、五センチメートルのところが五ケ所、二二センチメートルのところが六ケ所、二三センチメートルのところが一ケ所であり、踏面は一一センチメートルのところが一ケ所、五、五センチメートルのところが一ケ所、五センチメートルのところが一〇ケ所であり、極めて幅が狭く、急勾配で、手摺に沿つてロープが取りつけられているけれども、昇降には極めて危険な状態にあることが認められ、他に右認定を左右するに証拠はない。ところで建築基準法第三五条、同法施行令第二三条によれば、本件階段の幅は七五センチメートル以上、けあげは二二センチメートル以下、踏面は二一センチメートル以上でなければならないことに定められているから、本件階段の右構造は建築基準法にも違反しているものであり、その設置に瑕疵があつたものというべきである。しかして前記証拠によれば、右設置の瑕疵がなければ前記中野実の転落事故は発生しなかつたであろうことが認められるから、原告が右転落事故により蒙つた損害は被告の本件階段設置の瑕疵によつて生じたものといわなければならない。被告は右転落事故は中野実の過失によるものであつて、本件階段設置の瑕疵によるものではないと主張するけれども、中野実に過失があつたとしても本件階段の設置に瑕疵がなければ、本件事故は起らなかつたであろうから、被告の右主張は理由がなく、前記認定の妨げとはならない。(輪湖公寛)

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